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捨てたもんじゃない!いまどき若者の告白

ある日の夕方、私は聞こえない友人数名と集まり渋谷で飲んでいた。
会話は主に手話。あっちでひらひら、こっちでひらひら、手話コミュニケーションが飛び交っている。
どっぷり夜もふけ、ほろ酔いのいい気分で席を立ったとき、ふと向かいに座っていたいまどきな若い男たち数人がこちらをじろじろ見ていることに気がついた。
人1倍小心な私。一気に酔いも冷め、ぎくしゃくしながら彼らの横を通り過ぎようとする。
が!男の1人がひらひらと私を招くような手の動きを見せた。
カツアゲ?暴力?まさかクスリの密売!?
私は震えあがり頭が真っ白になった。
友はとっくにレジのほうへ去り、1人逃げおくれたと、無念な気持ちでいっぱいだった。
とつぜん男に動きが見られた。おもむろに携帯電話を取り出し、こちらへ差し出す。
その携帯から何かビームがでるんじゃないかと思うくらい恐ろしかったが、見なけりゃもっと恐ろしいことになると、目をこらして画面を見た。
メール画面にはなにやら一言書き込まれている。
『好きだって』
は!?とその男の顔を見ると、今度はその男の指先が、隣に座る男を指さした。
え!?とその指さす方向を見ると、指さされた男は「てへっ」と笑った。
なんと、その青年団は手話で話す私を見て、私も聞こえないのだと思ったらしい。
「あの人たち聞こえないみたいだけど、ちょっと引っかけてみようぜ」「でもオレ手話できないよ」「メールにかけばいいべ」そんな感じでさきほどの流れに行き着いたのではないか。
よくよく彼等を見ると、さっきまで鬼の面のように映っていた顔は、若々しく、日本のこれからを背負っているかのような頼もしさもあった。
私は「すいません、まる聞こえです」とは言えず、へこへこ頭を下げながらその場を去った。
携帯のメールと、ジェスチャーをコラボレーションしての見事な告白。なんだかいまの若者も捨てたもんじゃないと、いい気分で店を出た。

06.8.29 レナ

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