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宝物になった手紙

まだ会ったことのないRさんに手紙を書くことになった。彼は目が見えない。
私は点字キットを用意し、さぁ点字の手紙を書こうと意気込んだ。
でも、あれ、Rさんって点字が読めるんだっけ?ふと思った。
目の見えない人全員が点字を読めるわけではない。
普通に書いてご家族に読み上げてもらうか、点字で書くか、はたまた手紙は入れずに荷物だけ送り、メールでお知らせするか......
迷ったあげく、やはり手紙を書くことにした。だって自分が手紙をもらうとうれしい。
そこで私は点字がわからなくても読めるようにと、点字を打つ棒で厚めの紙に文字を打ちこんだ。点字ではなく、そのままの文字の形を浮き上がらせるように。
浮き上がり文字の手紙は思いのほかスペースをとり、「Rさんへ 本です」くらいで手紙は終わった。
その後何ヶ月か経ち、私は実際にRさんと会う機会に恵まれた。
はじめましての挨拶をして席につくと、Rさんがあるものを取り出した。
それは先日送った手紙だった。よごれないように、きれいにラミネート加工が施されている。
「これね、手紙をもらったときにはじめ、あ、点字だ、オレは点字が読めないんだよなと思ったんですよ。でもふと、点字じゃないって気がついたんです。さわってみると、あらあら、自分にも読める!って。とてもうれしかった。ありがとう、宝物です」Rさんはこうおっしゃった。
私は胸が熱くなった。こうしたらどうかな?と自分なりに考えたことが、きちんと相手の心に届き、それが宝物になったなんて、うれしすぎる。
そして大事そうに手紙を包んだラミネートに、Rさんのきくばりを感じた。
きくばりはまたきくばりを生み、その輪は広がっていくんだと、しみじみ思った。

06.8.29 レナ

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